JOHN COLTRANE / “LIVE” AT THE VILLAGE VANGUARD

このライヴのコルトレーンは最強ではないか?

JOHN COLTRANE / “LIVE” AT THE VILLAGE VANGUARD (IMPULSE! A-10)

この作品は1961年11月に2日間通しで行われたヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴから3曲を選曲して収録されている。たった3曲だが、濃度はMADMAX、聴いた後は3曲で十分で思うこと間違いなし。まずこのライヴの驚くべきポイントは録音が61年。マイルスがカインド・オブ・ブルーを録音したのが59年だからそれから僅か2年、2年でここまでのサウンドが出来上がるという、コルトレーンの成長にある。そして私が最強と思う所以は、コルトレーンのインプロヴィゼイションのバランス。抜群に良い。以降は徐々に精神性を強く押し出したフリー要素が強くなっていくが、ここでのコルトレーンの音使いとフレーズは、技術力と表現力が見事に調和した即行芸術の頂きにきている。エリック・ドルフィーも1曲参加しているが、聴けば完全にコルトレーンのほうが2歩ぐらい先に行っているのが分かる。その後ドルフィーはコルトレーンと同じ境地まで登り詰めるのは周知の事実だが、ここでのコルトレーンは誰も手が届かないジャズの頂点、最強の位置に君臨している。制作陣もプロデューサーはインパルスのボス、ボブ・シール、録音はルディ・ヴァンゲルダーと盤石の体制。本当にすべてが揃った作品。

コルトレーン
udiscoermusic.comより
https://www.udiscovermusic.com/stories/john-coltrane-prestige-sheets-of-sound/

メンバーも最強

メンバーはマッコイ・タイナー、レジー・ワークマン、エルヴィン・ジョーンズ。さらにエリック・ドルフィーが数曲に参加。ドルフィーを除いた3人は、コルトレーンとクインテットとして録音を続けるメンバーになる。以前のアトランティック時代に比べ、ようやくコルトレーンの意思についていけるメンバーが揃ったと思う。ピアノのマッコイ・タイナーもコルトレーンのフレーズに負けず劣らずの美しさを奏でており、レジー・ワークマンとエルヴィン・ジョーンズもこれ以上ないハードな土台を作っている。当時で考えられる最強のメンバーだろう。この乗り物でコルトレーンが爆走、もう誰も追いつけない。

ピーター・バラカンもぶっ飛んだ

タモリのジャズスタジオという番組中でゲストのピーター・バラカンが本作品を紹介している。ここでバラカンも十代の時これを初めて聴いて、ぶっ飛んだ、と。確かにこの作品のエネルギーをまともに受けたら、ぶっ飛ぶ。それぐらい圧倒されるライヴだ。

ぶっ飛んだあとは

このライヴでぶっ飛んだら、同インパルスから2枚組の未発表音源集「JOHN COLTRANE ‎– THE OTHER VILLAGE VANGUARD TAPES」が出ており、本作に選ばれた3曲以外の他テイクが収録されているので、レコードで聴くならこれがお薦めである。もっと追求したい方は、全ての録音が入っているCDもある。

「JOHN COLTRANE ‎– THE OTHER VILLAGE VANGUARD TAPES」

2年後には2回目のライブ・アルバム「COLTRANE LIVE AT BIRDLAND」をリリースしている。メンバーもヴィレッジ・ヴァンガードと同じ。さらに進化したコルトレーンが確認出来る。評論家などの間ではこのバードランドが一番バランスが良いとされており、個人的にはバランスに関しては同意する。ただ何度も言っているが、ヴィレッジ・ヴァンガードでのあのエネルギー、爆発力と比べると少し物足りさを感じてしまう。

「COLTRANE LIVE AT BIRDLAND」
udiscovermusic.jpより
https://www.udiscovermusic.jp/stories/rediscover-coltrane-live-at-birdland

コルトレーンではないが、「ERIC DOLPHY IN EUROPE」もお勧めだ。本ライヴに参加してから3年後のヨーロッパでのライブ作品。ここでのドルフィーのインプロヴィゼーションは61年のコルトレーンに引けを取らない圧倒的なエネルギーを放出している。もし、ヴィレッジ・ヴァンガードで反応した場合はこちらのアルバムをじっくり聴いていただきたい。

「ERIC DOLPHY IN EUROPE」
universal-music.co.jpより
https://www.universal-music.co.jp/eric-dolphy/products/ucco-90440/