クイケン/ バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全曲) HARMONIA MUNDI /ドイツ盤 /オリジナル

concertzender.nrより
https://www.concertzender.nl/soloist-portrait-sigiswald-kuijken/

ピリオド楽器演奏の草分け

今回紹介する無伴奏ヴァイオリンを演奏しているのはシギスヴァルト・クイケンというベルギーのバイオリニスト。クイケンは3兄弟全てが音楽家という恵まれた兄弟の次男にあたる。活動当初からバロックの楽器、いわゆるピリオド楽器を使用して演奏活動をしていた。今日では当たり前のピリオド楽器の演奏だがその草分けでもある。

ピリオド楽器とは?

作品の紹介の前にピリオド楽器について説明したい。ピリオド楽器とは大きく古楽器の総称である。対し現代の楽器のことをモダン楽器という。このピリオド楽器が今日また普及したというのは元々の演奏の原点回帰によるものだ。モーツァルトやベートーヴェン以前の作曲家はもちろん時代的にピリオド楽器が使われていたということから実際の音を追い求めピリオド楽器を使用する奏者が70年代頃より徐々に増えていった。ピリオド楽器の音はモダン楽器に比べどうしても線の細い音がするが反対にそれが音楽の本質を物語るとでもいうのだろうか。そういった側面を浮き彫りにするという評価が高くなっていった。

patch.comより
https://patch.com/connecticut/branford/ev–baroque-concert-on-period-instruments

朴訥な無伴奏

その流れの中で81年に録音されたのがこのクイケンによるバッハの無伴奏ヴァイオリンになる。この演奏はバロックヴァイオリンによる初の全曲盤だ。一聴するとすぐにわかると思うが、ビブラートのない何とも骨格のみというようなシンプルな演奏だ。モダンバイオリンが奏でる華やかさなどは皆無である。なんとも職人基質と言うか素朴と言うか独特なバッハの無伴奏である。今日でも評価が高く、古楽器の演奏の無伴奏としては代表の座に居座り続けている。個人的にはソナタの第3番がおすすめ。バッハの奥深さが感じられる演奏だ。

おかわり盤

クイケンはこの20年後、1999年から2000年にかけて同曲を再録音している。音源は CD ではあるが以前の録音とまた一味違った音を聞かせてくれる。

2018年、最近の録音だがジュリアーノ・カルミニョーラの無伴奏ヴァイオリンもぜひ聴いていただきたい。こちらはグラモフォンが初めて録音したピリオド楽器による無伴奏ヴァイオリンである。 クイケンのピリオド楽器の追求の仕方とはまた違うピリオド楽器の可能性を感じる、恐ろしく高度な演奏で本当に素晴らしい。

最後に

ピリオド楽器とモダン楽器、両楽器の好みはどうしても別れてしまうところだが、 現代では バロックのヴァイオリンにモダンの弓を使ったりモダンのヴァイオリンにバロックの弦を張ったりしながらハイブリッドな演奏も見られるようになっている。なぜモダン楽器ができたのか?また、なぜピリオド楽器の音に心が惹かれるのか?現在においても未だ演奏家によって追求され続けている。そのような点も確認しながら聴かれると、新旧クラシック音楽の面白さが深まると思う。